『つぐない』で、一途で愛に生きた姉を演じたキーラ・ナイトレイ主演の最新作『オフィシャル・シークレット』。
イギリスの英国諜報機関に勤める女性は「国家機密」を目にしたことで、戦争を止めるために奔走します。
たとえ国や政府を裏切っても、彼女が守りたかったものとは…?
『オフィシャル・シークレット』のあらすじと注目ポイント
2003年1月、イギリス諜報機関(GCHQ)に勤めるキャサリンは、米諜報機関(NSA)からのメールを見てしまいました。
内容は「英米がイラク侵攻を強行するため、国連安全保障理事会のメンバーに対するスパイ活動を指示する」という衝撃的な内容でした。
悩んだキャサリンは元同僚と話し合い、なんとかマスコミへリークできないかと相談したのです。
2週間後、英国の新聞にキャサリンのリークがトップ記事で掲載されたことで、GCHQは激怒し犯人探しを始めます。
キャサリンは疑われた同僚たちが尋問されていく姿を見て、自らリークしたのは自分だと名乗り出ました。
その頃、アメリカからイラクへ宣戦布告が発表され、イラク戦争が開戦してしまいました。
キャサリンは法で裁かれることとなり、弁護士として”人権派”として有名なベンが名乗り出ます。
そして2004年2月、ついにキャサリンの裁判が幕を開けるのです。
『オフィシャル・シークレット』の評価・レビューはどんな感じ?

この作品は、イラク戦争でイラクへの違法な工作活動を知った女性が勇気ある行動を起こしたノンフィクションドラマです。
『オフィシャル・シークレット』の感想をまとめてみた
戦争へ駒を進めるための、英米諜報機関がもくろんだ陰謀を知ってしまったキャサリンが起こした告発と、政府に告訴された裁判を中心に展開されます。
重めでシリアスなヒューマンドラマですが、好みの人にとっては興味深い一作です。
娯楽としてもこの作品は実によくできている。
諜報機関というものが、どのように動いていて、
そこに務める職員たちはは至って普通で、
亡命を申請している人の苦労や、反戦主義者たちの苦悩や、
人権を取り扱っている弁護士たちの意思の強さや、
新聞記者とはどのようにして揺れ動くのかとか、
とにかくそういった「中身」が実に面白い
引用元:https://eiga.com/movie/92375/review/
政治的な部分や裁判を通してキャサリンが”守るべきもの”が色濃く描かれています。
キャサリンの弁護士、告発した新聞記者も実に魅力的です。
この作品は多角面でさまざまな人の気持ちが、丁寧に映し出されているのです。
キャサリンが守りたかったもの
本作のポイントの一つが、キャサリンが自らの仕事を投げ捨ててたとえ政府を敵に回すことになっても「守りたかったもの」です。
強大な一国のエゴによって人々の命が軽視されて良いはずもない…
「私は政府に仕えているんじゃない。国民に仕えているんだ。」
私たちは、たくさんの公務員の皆さんに自分の安全や財産や権利、自由を委ねている。
そう言ってくれる公務員の方が一人でも多い国であって欲しい。
引用元:https://eiga.com/movie/92375/review/02393674/
この映画には大きな出来事やどんでん返しがあるわけではないので「地味な映画」だと称される方もおられると思いますが、重厚な人間ドラマとしてはとても評判が良く、観客レビューでも非常に高評価な作品です。
実在するキャサリン・ガンは控訴取り下げにより自由の身に。
この勇気ある告発でサム・アダムス賞を授与されています。
もともとキャサリンさんは日本で英語教師として働いていたこともあり、日本にもなじみ深い方で、現在はご主人が国籍を持つトルコとイギリスを行き来する生活をされているそうです。
『オフィシャル・シークレット』の全体的な総評
国や政府を相手にするという、途方もなく大きなもやのような存在に立ち向かおうとしたキャサリン。
告発を手助けした一新聞記者の勇気もさることながら、仲間たちが告発者として疑われ、執拗に尋問されているのが耐えられなくて自ら名乗り出るということは、なかなかできることではありません。
戦争という国を揺るがす大きな問題だったこともありますが、何よりも彼女の「正義感」で動いたということはとても大きいことです。
キャサリンの力ではどうにもならなかった虚しさと、国々の情報戦の恐ろしさを感じられる一作ですね。
主役を演じるキーラ・ナイトレイは、作品によって妖艶でも硬派な役でもなんでも演じられる実力派です。
美しさの中に芯の強さが見える女優さんで、キャサリン役にはぴったりだと思いました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
重厚な人間ドラマが描かれた今回は『オフィシャル・シークレット』をご紹介しました。
ミニシアター系の作品ながら見応えあるサスペンスドラマ。
秋の夜長にぜひ、ご覧ください。